欧文作品名読み者原作備考年掲載誌:

Fuichin

Fuichin
ふいちんさん
上田としこ
UEDA Toshiko
少女クラブ
Shojo Club
当時の少女読者にとって国交回復前の中国は未知の異世界だった。シャープな画風で明るい中国人少女の日常を描いて「外」への眼をひらいてくれた。
For girl readers at the time, China before the restoration of diplomatic relations was an unknown foreign world. The sharp style of the paintings opened their eyes to the ‘outside’ by depicting the daily life of a bright Chinese girl.
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このマンガのレビュー

旧満州のハルピンで暮らす門番の娘・フイチンは、身分の差を気にしない。曲がったことが嫌いで、困っている人を見れば損得を顧みず手を差し伸べる。さっぱりとした気持ちの良い少女・フイチンの活躍が描かれる本作は、読んでいて爽快だ。
作者は、村上もとか著『フイチン再見!』で一躍スポットがあたった上田としこ。「女は家庭に入る」が当たり前だった時代、女性マンガ家として名を成した先駆者だ。当時、女性がペン一本で身を立てていくことがいかに大変だったかは想像に難くない。フイチン魂で上田は道を切り開いてくれた。その後ろ姿に励まされた後進作家は多い。
なにより上田の柔らかで伸びやかな線が、マンガ表現の雄大に広がる可能性を感じさせた。旧満州のゆったりした大地と空気を見事に活写し、いつの時代の読者も読めばあっという間にその世界にいざなわれるだろう。また、フイチンは高い塀もするすると乗り越え、まくわ瓜をいっぱいにのせたカゴを前後に取り付けた天秤棒も「ああ おもい」と言いながら、ひょいと持ち上げる。
そのダイナミックな動きは紙から飛び出し、動いているように見える。
本作は復刻版が上下巻で刊行されており、電子書籍でも読むことが可能だ。少女マンガ初期の傑作として次世代にも読まれ続けてほしいし、作者のさらなる再評価につながればと願う。

 

KURAMOCHI Kayoko

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