トキワ荘の時代のマンガ100選

あらゆる“情”の中で至高のものは友情だ。どの情に価値を見出すかは人それぞれでも、私の中ではそうだ。
読み手の中の“最も尊い情”が何かを浮かび上がらせてくれるのがエドガーとアランの関係性だ。永い時を生きるエドガーは、アランと出会い一族に加えたいと考えた。人間たちにバンパネラだと見破られ、メリーベルら最愛の家族を失い、その想いは決定的となる。アランもまた、彼の生い立ちからくる深い孤独感にエドガーの誘いを受け入れる。秘密と永遠の命を分かつ2人の少年。運命的な出会いを果たし歯車が動き出すまで、共に過ごしたのはごくわずかな期間だ。彼らはお互いの方向を向いていない。2人が見ている方向は今もなお亡きメリーベル。彼女の幻影を追い続ける宿命を共に背負い、喧嘩や仲違いをしながらも、バンパネラの命のように不滅の友情がそこにある。私が子どもの頃に、もしもこんな友情を手に入れられていたならどれほど美しい世界が広がっていただろう。もう手に入らないものだからこそ美しさが際立つ。
あなたが『ポーの一族』を読み、感じっとった情は何だろうか。

（川俣 綾加KAWAMATA Ayaka）