ワイルド7 Wild 7
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このマンガのレビュー
『ワイルド7』は、設定だけで、既にもう面白いマンガである。バイクや銃のディテールが加わり、高い画力で描かれる。時代を超えて少年の心を揺さぶるものになるのも当然だ。
ワイルド7とは、将来を嘱望されていたエリート官僚・草波勝が、毒をもって毒を、悪をもって悪を制すべく犯罪者によって組織した秘密警察組織のことである。少年院に入っていた飛葉大陸など、さまざまな特技を持つメンバーは、警視長・警視正といった、警視総監・警視監に次ぐ高位の階級を持っている。その階級章を見せると一般の警官はたちまち顔色を失う。ワイルド7のメンバーは、政財界の黒幕と癒着し通常の警察捜査が及ばない犯罪者に対して実力行使に及ぶ。「逮捕」ではなく「退治」するのである。念頭に置かれていたのは、下山事件などの戦後未解決事件や、過激派学生による混乱などに対する警察機動隊の無力などに対する「なんとかならないのか」という当時の素朴な感情だっただろう。ワイルド7の無茶苦茶なやり方に溜飲を下げた人は多かったはずだ。
1960年代後半、戦後漫画で育った世代は劇画ブームを起こす。『ワイルド7』の設定はマンガ的でありながら、絵は劇画調である。ホンダ CB750FOURやハーレーダッドソンFLHなどのバイク、コルト・ウッズマンやレミントンM31などの銃が緻密に描かれる。バイクマニア、銃マニアの人が見れば、それとわかる。マンガに出てくる宇宙船や光線銃も確かに魅力的だ。しかし、実在するバイクや銃が作中に出てきて活躍すれば、作品への没入感や魅力はさらに高まる。
長期連載された人気作だけあって、テレビドラマ化、アニメ化、映画化もされている。世情の変化や実在の組織・事件などに配慮されて、改変を余儀なくされている部分も多い。それだけに原典にあたる意義の大きい作品と言えるだろう。