男一匹ガキ大将 The Gang Leader
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このマンガのレビュー
1968年、先行する少年マンガ誌、「少年マガジン」「少年サンデー」から遅れること9年、後に日本のみならず世界のマンガ・アニメシーンを牽引する「少年ジャンプ」が創刊された。
創刊当時こそ既成作家をラインナップに揃えられたものの、専属作家の不足は否めず、作家の発掘・育成は急務であった。その中で全く対照的なアプローチで少年読者の心をつかみ、その後の週刊少年ジャンプの方向性に大きく影響を与えた、若手作家による事実上のローンチタイトル2篇の連載が始まった。ひとつは永井豪の「ハレンチ学園」、もうひとつは本宮ひろ志の「男一匹ガキ大将」である。
「ハレンチ学園」はエログロナンセンス路線を突き進み、スカートめくり等読者少年の「隠れた欲望」に訴え人気を博したが、悪書として当時のPTAから指弾を受けるなど、社会問題を引き起こすに至った。「ハレンチ学園」が変化球路線とすれば「男一匹ガキ大将」は少年ジャンプのスローガンとされる友情・努力・勝利を体現する少年マンガのど真ん中を行く突破力のある剛直球路線であった。
本作の魅力は主人公戸川万吉の底知れぬ人たらしぶりとスケールの大きなケンカである。万吉の破天荒な行動力と自然に湧き出てくるただ者ならぬオーラは周囲を魅了し、対立する者、一度敵に寝返った者(万吉の千人の子分は敵の調略によって何度も寝返ってしまう)を味方にし、最大のライバルである「水戸のばばあ」をも邂逅時から一目置かせるのである。主人公の圧倒的な人たらしぶりは本宮作品の共通する特徴であり、本宮本人が主人公の「やぶれかぶれ」において昭和最大の人たらしである田中角栄との対話を描くに至っている。
「ファンロード」誌において「リングにかけろの法則」として称された「負けない、死なない、殴り合ったらお友達」は現在の作品群に至るまでフーガのごとく少年ジャンプの重低音を奏でているが、本作が最初の一振りと言えよう。