東京・パリ Tokyo-Paris

Tokyo-Paris
とうきょうぱり
春名 誠一
少女
Shojo Club
スタイル画のような全身像を配するなど、その後の少女マンガの見せ方構図を変えたエポックメイキングな作品
An epoch-making work that changed the way shōjo manga was presented and composed, including the use of full-body portraits like stylised paintings.
このマンガのレビュー
マンガというよりもイラストレーションに近く、いわばデザイン画の世界をストーリーマンガの世界に持ち込んだという点で、非常にエポックメイキングな作品。「少女」(光文社)の巻頭カラーを飾っていたこの作品を、読者は物語の筋を追うというより、ただひたすらに、絵の美しさにうっとりと魅入られていた。作品の背景には、戦後の混乱が落ち着いた頃から少女たちが抱きはじめた、パリという街への強い憧れがある。ニューヨークでもロンドンでもなく、なぜか「パリ」が少女たちの心を捉え、その憧れは長く続いた。本作は、その昭和のムードを体現した作品という面も持つ。
デビュー後、編集部で高橋先生の原画を拝見する機会があった。まるで下描きが存在しないかのような完成度、透明感のある淡い色彩に、本当に驚かされた。それも、ただ美しいだけではない。誰が見ても「高橋真琴」だとわかる唯一無二のスタイルは、かつての竹久夢二などにも通じるところがある。マンガ表現の新たな可能性を切り拓いた一作として、その価値は計り知れない。