ナガシマくん Nagashima-kun

このマンガのレビュー
2025年(令和7年)6月3日。昭和を代表するヒーローだった読売ジャイアンツ終身名誉監督の長嶋茂雄氏が亡くなった。
1959年(昭和34年)に発売した週刊少年サンデー創刊1号の表紙が長嶋氏なのは有名だが、週刊少年マガジンの創刊2号の表紙も長嶋氏だった。つまり2週連続で「週刊少年誌」の表紙を飾るほど当時の少年達に絶大な人気があった。
その同時代、月刊少年雑誌の「少年」(光文社・刊)に1959年から1964年(昭和39年)まで連載されたわちさんぺいのギャグ漫画「ナガシマくん」はタイトル通り長嶋氏(当時の表記は「長島」)本人が漫画のキャラとして登場しているが、主人公のナガシマシゲオくんは長嶋氏とは無関係な、同姓同名の野球好きの少年の物語である。
ナガシマくんは理髪店を営む父と、主婦の母、可愛い妹の四人家族で、安打小学校に転校し野球部に入部する事から物語がはじまる。
野球ばかりに熱中するナガシマくんに対して父は昭和の父親らしく「勉強しろ」と厳しく接するが、大学野球のキャプテン経験があり、そのツテを頼ってナガシマくんを本物の長島選手と会わせたり、スパイクを購入するなど息子に対しかなり甘い。特にナガシマくんが突き指をした時は就寝中気付かれないよう夜通しマッサージを施すなど、実は心から応援しているという、いわゆる「ツンデレ」的な描写が印象深い。
そうした「古き良き昭和」の理想的な家庭の、ほのぼのとした生活が生き生きと描写されているので、野球漫画というより生活ギャグ漫画のカテゴリに含まれる。
だからこそ大スターという遠い存在である現実の長島選手と違い、ナガシマくんは当時の読者にとってどこにでも居そうな等身大の友達という感覚であったろう。
野球に興味がなくても楽しく読める「古き良き昭和」の良作だ。