三丁目の夕日 Sunset on Third Street

Sunset on Third Street
さんちょうめのゆうひ
ビッグコミックオリジナル
Big Comic Original
古き昭和前期を知らない世代にもノスタルジーを感じさせる。心が温まるとはこの作品のことだろう。
It evokes nostalgia for a generation that has never heard of the old early Showa period. Heart-warming is what this work is all about.
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このマンガのレビュー
西岸良平作品全般に通じることではあるが、あらゆるところに濃厚な「死」が漂っている。一話完結形式の作品であり、話ごとの収まりとしては心温まる読後感を覚えるものが多いが、親しみやすいキャラクター造形や人情話に隠れて、時には明示されながら、レギュラーメンバーを含めた登場人物の多くが死や喪失、あるいはままならない現実を抱きながら生きている。
南方で戦友を亡くした男、婚約者が戦場で生死不明となり今の夫に嫁いだ女、夫を漁で亡くし自らも病に倒れたため息子を妹の子として託した母親、ストリッパーの母親が逮捕されそのまま蒸発した子ども、生活苦により娘を孤児院に捨てた女……本作の舞台は昭和30年代、すなわち戦後10年かそこらしか経っていない時代である。死と病と貧しさは、常に生活のすぐ隣にあった。経済白書が「もはや戦後ではない」(1956)とぶち上げる一方で、人々の心の中で「戦争」は決して終わっていなかった。塞がりかけたかさぶたの下で確かに疼いていた、年表には決して残らないそれぞれの傷。その痛みを知る世代が去りゆく21世紀、「昭和」から痛みの記憶を漂白して人情とノスタルジーで塗りつぶし、都合よく利用可能な断片情報に変換しようとする力学も強くはたらく中で、決して記号化され得ない個々の生を生きた人々の息遣いに、どのように耳を傾けていくかが問われている。