欧文作品名読み者原作備考年掲載誌:

GENKI, THE BOY CHAMP

GENKI, THE BOY CHAMP
がんばれげんき
小山 ゆう
KOYAMA Yu
週刊少年サンデー
Weekly Shonen Sunday
定番とは平凡と紙一重。「がんばれ元気」は明るく元気な理想の少年の生き方を非凡にしてみせた。
There is a fine line between the standard and the ordinary. ‘Ganbare Genki’ made the life of a bright, energetic, ideal boy extraordinary.
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このマンガのレビュー

小山ゆう先生の作品といえば、私の世代だと「あずみ」が有名である。しかし、私は「がんばれ元気」のほうがより小山ゆう先生の熱さを感じる。がんばれ元気は、一歩踏み出したくなるときにおすすめの一作だ。一歩踏み出す。とりあえず走り出すことで人生の壁と向き合い、壁にぶつかり、壁に負けないよう立ち上がる勇気をもらえる作品である。ただ、そういった前向きになれるマンガでもあるのだが、ただただストーリーが良いという点もあるので、ぜひ手にとってほしい。この作品は主人公の「堀口元気」が子どもの頃から始まる。父親はうだつの上がらないボクサーなのだが、主人公の元気は父を心から尊敬していた。そして、父親のマネをしてボクサーになることを夢見ていた。ただ、父親は試合で天才児と呼ばれる「関拳児」の前に敗北し、そのまま試合のダメージが深いまま無理に元気と遊びに行った結果、事故的に死んでしまう。祖父母に引き取られた元気は、将来ボクサーになることで父の無念を晴らそうと練習をしていく中で、数々のライバルとあっていくのだが・・・。というストーリー。これがまた本当に面白い!今見ても勢いも、試合の迫力も、そしてライバルや恋仲となる女性、仲間との絆も含めた「人間ドラマ」が面白いのである!令和の今読んでも、色褪せないような「人間の本質」がそこにある。ヒューマンドラマが好きな方に見てほしい一作。「ほっ!ほっ!ほっ!」って言いながら走りたくなるだろう!

Mangatari Maeda

アクション描写の名手・小山ゆう。『がんばれ元気』でのボクシングのアクションもまた、視覚から得られる爽快感で痺れさせてくれる。
映画的な画面構成とコマ割りで動きをわかりやすく伝え、時に無音のスローモーションのコマを挟み込む。デビュー2作目ながら洗練された静と動の使い分け。読むほどにページの上に映像がページの上に浮かび、アクションシーンが極上のエンタテインメントとなる。
堀口元気も気持ちのいいキャラクターだ。父の夢を自分が叶えるという目標を持ち、5歳にして町中で喧嘩を吹っかけてはボクシングで戦う。闘争心はこの頃から剥き出しだ。次第に明らかになる元気の生い立ち、家族の思いと、元気の溌剌さの中に含まれる一抹の悲しみ。それでも元気の元来の明るさは損なわれない。「とうちゃんの夢」を叶えるため明るく優しい少年のまま戦い続ける、いわば“光のボクシング漫画”。
小山といえばデビュー作の時代劇『おれは直角』、戦国末期を舞台に暗殺者の少女を描いた『あずみ』などチャンバラ時代劇を浮かべる人が多いかもしれない。現代が舞台(とはいっても令和の現在からすればもう現代ではないのかもしれない)の親子ドラマでも、小山漫画の魅力がたっぷり味わえるのは間違いない。

KAWAMATA Ayaka

今回のレビュー執筆に向け再読してみて、筆者にとって本作がベスト1に近い作品であることを再認識した。大傑作である。小山氏のデビュー作『おれは直角』を愛読していた者として、それに続く本作が少年サンデー誌上で始まったとき、前作同様の愛らしいキャラとキレの良いギャグを交えた親子ボクサーものだと期待し、実際に大変楽しく読ませてもらっていた。それが、突如、父親の死という、およそコメディーとは似つかわしくない展開に出会うことになって、心が震えたことを今でも記憶している。しかも、単なる物語上の段取りとしての「死」ではなく、すでに「どんなに主人公が父親を好きなのか!?」「どんなに父が息子を大事に思っているのか!?」を、そのギャグチックな展開で笑わされたり、ホロッとさせられたりしながら、十二分にこの父子に感情移入させられた末の「永遠の別離」であったからこその大ショックであった。逆に言えば、作者の術中に見事にハマったわけである。そこからラストまでキャラの無駄遣いなく、完璧なストーリーを仕上げてくれた小山氏に最大限の感謝をしたい。

ちなみに、本作の初代編集を担当した先輩に、本作を作る際のコンセプトを聞いたことがある。それは「相手に殴られた時より、相手を殴った時の方が、強く痛みを感じる人間が、ボクシングの世界チャンピオンになれるのか!?」というようなことだった。これ、素晴らしくないだろうか。これこそ『がんばれ元気』の背骨なのだ。頷かざるを得ない。その後、筆者が新作漫画を考える際のお手本とさせていただいたくらいである。もちろん、企画書だけが最高で、実際の作品がなぜかつまらないケースも数多い。本作を最高の作品に押し上げたのは、そのコンセプトから、血肉の通ったキャラを創出し、硬軟、緩急を自在に操りストーリーを編み上げた小山氏の「説得力」である。

EGAMI Hideki

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