欧文作品名読み者原作備考年掲載誌:

Pure Heart of the Hakata.

Pure Heart of the Hakata.
はかたっこじゅんじょう
長谷川 法世
HASEGAWA Hosei
漫画アクション
Manga Action
博多の文化風習をリアルに描いた青春巨編。男の子の甘酸っぱい成長ドラマに誰もがある種の懐かしさを覚える。
A youthful epic with a realistic depiction of Hakata's cultural customs. Everyone feels a kind of nostalgia for the boy's sweet and sour growing-up drama.
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このマンガのレビュー

独特な言葉や風土、風習、その地方で生きる人々の(他方から見るとある種特殊な)日常といった、さまざまな意味での「地域性」を題材にしたマンガが一般化して久しい。本作は『土佐の一本釣り』に続き、青年マンガ誌上においてローカリティを全面に打ち出した黎明期の作品であると同時に、大衆的な人気を獲得することでこのジャンルを確固たるものにした。

舞台は福岡市の中でも商人町としての歴史を持つ博多地域。博多祇園山笠はこの地域の重要な伝統行事であり、本作も山笠に始まり山笠に終わる。ここで描かれる山笠中心と言ってもいい生きざまは、福岡市出身ではあるが「博多」育ちではない筆者にとっては馴染みがなく、つまりそれほどローカルな感覚を描いているのである。全編をとおして登場する博多弁は言わずもがな、濃厚な地域色がありながら本作が全国の読者に親しまれたのは、等身大の、ふつうの少年の日常と成長が主軸にあるからだろう。思春期真っただ中の中学生・六平が、時にまっすぐ、時に下半身に振り回され、青春時代を蛇行しながら進んでいくさまは、我がことのように悩ましく、共感をもって受け入れられたはずだ。

中学生まで博多で過ごした長谷川法世が、群雄割拠するマンガ界で己にしか描けないものを求め、強い郷愁を背景に執筆した『博多っ子純情』。ローカリティとそれに伴う地域固有のアイデンティティを愛おしいものとして描きつつ、ある時代の青年たちにとっては普遍的な物語となったわけだが、福岡県内では、六平とヒロインの類子、そして長谷川自身が登場する地元銘菓のCMなどを通して、時代、そしてマンガというメディアを超え、「博多的」なものの代名詞として現在まで親しまれている点も面白い。

ISHII Akane

地方マンガセレクション⑤
トキワ荘の時代、多くの地方マンガが登場し多くは消えてしまいました。この作品は70年代に描かれたものですが地元新聞社によって復刊され、最近ではラジオドラマも作られたりして50年以上にわたり読み継がれています。
その要因一つは今も博多の最大の行事の一つである博多祇園山笠をテーマにしたことでしょう。主人公は子供の頃から山笠に出場し、祭りに関する様々なエピソードが取り上げられています。その影響もあって実際の山笠に作品の登場人物が登場したこともありました。
地域の風物をマンガに取り上げた作品は多いのですがその風物自体が今では失われてしまい、マンガの中でしか確かめることができません。一方、この作品で取り上げている祭りは今でも多くの観客を集める大イベントとなっています。地域の風物を最後まで大切にしたところではその風物に救われることになるのです。
次に注目したいのが言葉。この作品では徹底的に博多弁が使われています。時にはその用法の説明までついています。70年代までは地域の言葉は次第に標準語にとって代わり、方言を使う機会は次第に奪われていきました。そんな中で方言を作品の中心に据えてその大切さを訴えたことはユニークでした。
このほか、作者の長谷川法世が地元で現役で活動を続けていること、キャラクターがテレビCM に登場していることも人気が持続している要因でしょう。
この作品が博多というご当地を取り上げたことは時代を先取りしたと言えそうです。現在では多くの自治体や地域の企業がご当地を舞台としたマンガを作成することが増えてきました。全国一律で読まれる作品ではなく、その地域を中心に読まれる「ローカルコミック」の時代がやってきています。令和の時代、その先駆けとなったこの作品をこの機会にぜひ読み返してください。

HASHIMOTO Hiroshi

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