垣根の魔女 Witch on the fence
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Witch on the fence
かきねのまじょ
ビッグコミックス
Big Comic
「垣根の魔女」ことミドリと、周囲の人々が織りなす人情喜劇。画面に流れる空気感と季節の描写が秀逸。
A humanistic comedy about Midori, the ‘’Witch on the hedge‘’, and the people around her. The atmosphere on screen and the depiction of the seasons are excellent.
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このマンガのレビュー
買い物をしても歯医者に行っても昔馴染みがいるような、栄町に住んで70年のミドリさん。「おせっかいでスゲズケと口が悪いしその上声が大きい」なんて言われながらも、今日も町を歩き、人と人の間に顔を突っ込みます。キッスをキックと言い間違えるような古風なミドリさんですが、とにかく元気、活気、勢いあります!みんながそっとしておくところに猛襲するその姿はパワフルでコミカルで、そして寄り添う優しさがにじみます。
昭和50年代の社会は、アイスキャンディーがふたつで140円になったとミドリさんが嘆き、人と連絡を取るにも郵便の到着をじっと待つような、現代とはずいぶんと違う光景もあります。けれど町の皆や景色が活き活きと描かれるせいか、どこか今でもそう遠くない、身近で朗らかな雰囲気があります。そんな中でミドリさんは戦死した息子のことを何度も思い返すのには、はっと胸を衝かれました。しかし、それすらもけして特別なことでなく、自然体に作品に溶け込み、その痛みが日常にあり、今へと続いてきたことを感じさせます。
ミドリさんは子どもから大人まで、町の誰もに気を配りますが、とりわけ若者に語り掛けます。世代の違うところに入り込んで、ぐいっと背中を押せるのは、大らかなだけでなく、相手の気持ちも状況も見計らう繊細さもあるからです。そんな細やかさも作品の魅力ではないでしょうか。お酒を飲み交わしてうとうとしながらミドリさんは言います。「しっかりやれよ…… ぶざまでもいい カッコわるくてもいい…… 正直で………精一杯だったら…さ……」と。