欧文作品名読み者原作備考年掲載誌:

corsica

イラストレーター、漫画家

東京都中野区生まれ。幼少期から中野ブロードウェイにある「まんだらけ」で漫画ばかり読んで育つ。2010年よりイラストレーター、漫画家として活動開始。日本漫画家協会会員。
代表作「学習まんがアフォーダンス」

レビューの一覧

Dr.スランプ

「Dr.スランプ」との出会いは小学校中学年、近所の床屋の本棚で。毎回繰り広げられるドタバタ劇やギャグの応酬に即座に心打ち抜かれ、床屋から家に帰るやいなや、あるだけの小銭をかき集め近所の本屋でコミックを購入した。 鳥山作品の「キャラクター」はどれも素晴らしいのだが「空間設計」が見事だと思う。「ドラゴンボール」の天下一武道会のステージ上で繰り広げられるバトルはいつまでも飽きさせないし、宇宙船に乗ってナメック星にたどり着いた時のワクワク感は忘れられない。(「SAND LAND」の荒涼とした砂の惑星や「COWA!」の不気味で愛らしい岬など挙げだしたらきりがない) もちろん「Dr.スランプ」も素晴らしい。小学生だった僕はアラレちゃんと共にみどり先生のいる学校へ通い、放課後はあかねちんと喫茶Coffee Potで寄り道したり、不時着した烈津號(れっつごう)に住む摘姉弟に会いに行ったり、則巻博士の研究所に行き発明をおねだりしたり…とペンギン村を駆け回る空想をした。初連載でこんな世界観を創ることのできた鳥山明、恐ろしい…。

猿飛佐助

杉浦茂の本を初めて手にしたのは近所の図書館。独特のセリフ回しやオフビートなストーリー展開、奇抜なキャラクターとその名前(「おちゃづけ三ばいのすけ」なんてどうやって思いつくんだろう?)に一瞬で心奪われた。作中で繰り広げられる奇妙奇天烈な世界は、杉浦茂以前にも以後にも存在しない、まさに唯一無二のものだと思う。これが戦後まもなくに描かれ、当時の子供達に圧倒的な人気を得たという事実には驚かされる。 杉浦作品を読むとお腹が空いてくる。いつも作中に美味そうな食べ物が登場するからだ。(猿飛佐助もそれは美味しそうにコロッケや串団子を食べている。)これは戦中、戦後の食糧難の時代を経験した杉浦だからこそ生まれた表現ではないだろうか。(元々彼が食いしん坊だったのかもしれないけれど…)読者である子供達も漫画内に馴染みのあるオヤツや料理が出てくることで、杉浦の奇想天外な世界への愛着が一層増したのではなかろうか。晩年の作品でもそのユーモアとサービス精神は消えることは無かった。憧れの存在である。

ルパン三世

多くの人は「ルパン三世」をアニメで先に知ったと思う。僕もそうである。原作である漫画の「ルパン三世」を初めて読んだときは、アニメとの絵柄やノリの違いに正直驚いた。 でもモンキー・パンチ先生独特のアメリカのアングラコミックと日本の劇画を織り交ぜたような画面づくりは、読み進めるとどんどんクセになっていく。登場するキャラクターもアニメとは全然違いアダルトでクールでかっこいい。峰不二子は毎回違う女性として登場するし、銭形はおふざけなしの頭の切れる寡黙で二枚目な警部だし、ルパンも残虐でためらわずバンバン人を殺す。 そして何よりシビレたのは、ルパン三世の素顔を誰も知らないということ!皆がよく知るあの顔は偽物。長年の相棒である次元ですらルパンの素顔を知らない。そもそも性別すら不詳。ここまで有名なキャラクターでありながら誰もその素顔を知ることがないというのが、ルパンらしくて憎い。その事実に唯一気づいた銭形はルパンを捕らえることに成功するが…。気になった方は漫画版を是非。

ストップ!にいちゃん

「ストップ!にいちゃん」の主人公「南郷勇一」はスポーツ万能の中学3年生。野球部のキャプテンでありながら柔道部、拳闘部、サッカー部のキャプテンも兼任しているスポーツ万能な少年。しかし彼のわんぱくでオッチョコチョイな性格のせいで、毎回学校や町内で騒動を引き起こし、その度に聡明な小学生の弟賢二にたしなめられる。1962〜68年まで雑誌「少年」で連載されていた本作は、60年代の少年達の夢や憧れが詰め込まれている。 連載前半のスポーツを中心としたドタバタ劇も大変楽しいのだが、連載後期になると、突然町内に金星人が現れて勇一と対決を始めたり、かと思えば勇一が忍者小説を書きだし、そこからメタ的な忍者劇が始まったりといったトンデモ展開が始まる。作者がスポ根漫画を描き続けていくのに飽きたのか、編集者からの提案があったのかは分からない。僕は関谷ひさしの描く端麗な顔立ちの少年少女たちがシュールな世界に迷いこんでいく連載後期のストーリーのほうが好きである。