童夢
かっこよくて背伸びしてでも読んでみたい。
京都精華大学 マンガ学部キャラクターデザインコース准教授
マンガの学芸員としてマンガの制作過程に迫る展覧会やイベントに関心があり、京都国際マンガミュージアムをはじめ、ポンピドゥー・センター(フランス)、ジャパンクリエイティブセンター(シンガポール)、熊本市現代美術館、湯前まんが美術館での展覧会企画、合志マンガミュージアム、高知まんがBASEの設立に携わる。
教育面では美術科教育におけるマンガの指導案構築や国内外問わずマンガの作画教室・ワークショップにも従事。
また企業・自治体から依頼を受け、イラストレーションやキャラクターデザイン、パッケージデザイン等も制作する。
かっこよくて背伸びしてでも読んでみたい。
最も強いマンガキャラクターは誰か?それは範馬勇次郎でもケンシロウでもなく「アラレちゃん」なのではないでしょうか。キーン!と走ればマッハ3。ペガサス流星拳のマッハ1を上回ります。ほいっと拳1つで「地球割」はワンパンマンも叶いません。「んちゃ砲」も超サイヤ人と互角の勝負。。。とにかく「むちゃんこつおい」んです。 自称天才科学者の則巻千兵衛が生み出した人間型ロボット、アラレちゃんを中心に描かれたパワフルコメディは、ガッちゃんやスッパマン、ニコチャン大王など、個性豊かなキャラクターたちも大活躍。魅力はなんといっても、鳥山ワールド全開のポップでバカバカしいギャグ。ドラゴンボール超やDAIMAの魅力の源流がここにあるとも言えます。そして絵の巧さ。シンプルかつ、丸っこい線で描かれる一コマ一コマはグッズやポストカードにして飾りたいくらいうっとりしてしまいます。よく見てみるとトーンもほとんど使わず、ペン一本で描いている所がまた惚れ惚れ。ペンギン村はダサくてド田舎、いつもドタバタ、ハチャメチャだけど、人も動物もロボットも宇宙人でさえも普通に受け入れてくれちゃいます。そんな魅力が支持されて、世界中を虜にする鳥山ワールドを堪能してください。
「上杉達也は朝倉南を愛しています。世界中の誰よりも。」「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。」「一気にいくからな!つぶれるときはいっしょだぜ。」セリフを並べるだけで、一度は聞いたことがある人も多いはず。そして読んだことがある人は、あのシーンの達也や南の表情が思い出せてしまうほど、色濃く記憶に残っているのではないでしょうか。かわってコミカルな日常シーンでは、少し抜けたところがあり飄々としたたっちゃんの振る舞い、そしてそれを放っておけない南とのやり取りが甲斐甲斐しくて癒やされます。 作画に目をやると、野球をしている達也や新体操の南を描く洗練された主線は、キャラクターが実在するかのような説得力を持たせ、体のしなりやしなやかさが美しい。また、キャラクターの魅力に留まらず、景色だけのコマが連続することで、時間の流れ、夏の匂い、太陽が照りつけるマウンド、青春の儚さが、読者にも届き、なんとも心地よい。マンガはどんな季節に読んでも楽しめますが、「タッチ」は夏がよく似合うマンガですね。
「ハマちゃんみたいに生きてみたい」。会社員経験のある人なら、一度はよぎったことがあるのではないでしょうか。大人になるにつれ、いろんなしがらみや常識がこびり付いてしまうのが人の常。 しかし、呑気に自分を貫いちゃってるハマちゃんのなんと逞しく、偉大なことか。実社会では世間体を気にしてなかなかできないことも、臆せず体現してくれるハマちゃん。あんな風に生きれたらな〜と呟いてしまいます。出世に目もくれず、上司に怒られても気にもかけず、仕事はそっちのけで仲良しスーさんと釣り三昧。単行本115巻、連載45年を超えてなお連載中の御長寿マンガの魅力でありましょう。毎号読めるこの幸せを噛み締めつつ、現実にキツイこと、許せないことがあっても、今日もハマちゃんに元気をもらって仕事に精を出しましょう!多くの人は、三國連太郎のスーさん、西田敏行のハマちゃんの実写映画を思い浮かべる人も多いはず。映画版とマンガ版の比較も一興です。
誕生日が三月三日の主人公、三平三平くんと釣り竿職人の一平じいさん、釣りのライバルであり兄のような存在の鮎川魚紳さんらと共に、日本のみならず世界各地の魚を釣りまくります。魚種の特徴や模様はもちろん、ヒレや口元のかっこよさ、ぷりぷりした体型など魚を手にした時の感動や躍動感がコマから溢れ出ています。丁寧な表現は魚のみならず自然描写からも、矢口さんの自然に対する敬意が感じ取れて胸熱です。キラキラと輝く水面、風になびく草花、まぶしい太陽の輝き、四季の移ろいなど、三平くんといっしょに釣りに出かけたような気分が味わえます。 オススメしたいのは幻の魚「滝太郎」編、潜水艦の「アカメ編」、いやいや海外旅行気分が味わえるカナダの「サーモン・ダービー」編も捨てがたい、と上げるとキリがありません。単行本は60巻以上ありますが、どこから読んでも魅力は堪能できるはず。さらに最終回「涙のブランコ」も必読。未読の人はネット検索などせず読んでみてください。